居場所がない人が集まれる場づくりを2年続けてわかったこと
クワタといいます。人生相談所に勤めてます。
おうちプロジェクトという居場所づくりの活動を趣味でやってます。
やることは、愛すべき無職の兄弟が住む家を開放してもらって、月1回20人くらいでご飯を食べる、ただそれだけ。
あとは集まる人がやりたいことを持ちこんで楽しく過ごせればいい。理由はわかりませんが、その余白が大事なんじゃないかと感じてます。
2017年の11月からはじめたので、もうすぐ2年。
2019年の7月にミーティングをやって、これまでのことをふりかえってみました。
他人に説明する言葉に一人ひとりの想いがあらわれる
ミーティングの参加者に、こんな投げかけをしてみました。
「おうちプロジェクトをどうやって友人に紹介する?」
「その友人から『どうしてこの集まりに参加してるの?』って聞かれたらどう答える?」
こんなことを聞いてみたのは。他人に説明する内容を考えて言葉にすることで、自分たちの活動を客観的にとらえなおせるから。
予想通り、一人ひとり違うユニークな答えが集まっておもしろかったなぁ。
家を開放してる人は「兄弟だけで暮らしてると息が詰まるから、外の風が入ってトゲトゲせずにすむ」と。
ある人は「日ごろ『せねばならない』論にとらわれてて、そこから開放されるのがいい」と言ってました。
他には「人見知りだけどさびしがりやだから、話さなくても人の気配があるのがいい」とか。
自分はなにを話したかと言うと…。
ぼくは昔から、理由もないのに人と会って話したり一緒に過ごすのがどうにも居心地が悪くて、フリートークも苦手。
だからといってずっと1人でいるのもしんどいから、学生のときは部活に居場所を見つけてました。
部活だったらやることが明確なので、それを話題にしてコミュニケーションが取ましたから。
だから、人と会ってしゃべる理由をつくるためにおうちプロジェクトをはじめたんです。
責任や役割はつくらずに、人が集まる理由をつくる
語り合ってみておもしろかったのは、自然とみんな自分の生きづらさを語っていたこと。
その生きづらさは人それぞれ違うユニークなことで、それがおうちプロジェクトの活動とどうつながってるのか、それぞれの言葉で語られてました。
その言葉を合わせると、ひとつの結論が見えてきました。
人は会う理由がないと集まれないけど、理由にしばられすぎると「こうしなければならない」という立ち位置や責任ができてしまい、息苦しくなってしまいます。
集まる理由がありつつも自由に過ごせる雰囲気があれば、それが居心地のよさにつながるんですね。
この2つをどう両立させるかが、居心地のいい場をつくるポイント。
ただ、居心地のいい場所をつくるだけではまだ足りなくて、新しい人がどうやっておうちプロジェクトのことを知るかも大事。
まったく知らない場所に1人で言ってみるのは、どうにもハードルが高いですから。
この部分ではすでに方針が決まってます。
「すでに参加してる人が新しい人を呼び込む」、つまり口コミですね。
はじめての人も知り合いと一緒だったら来やすいし、まったく知らない人よりも定着率がはるかに高いですからね。
参加したことのある人が「この人にも来てもらいたい」という人に声をかけることで、居場所がない人がまず参加するきっかけになります。
広くビラをまいて宣伝するよりこの方が人間関係的に自然ですし、場も安定します。
どんな場にも雰囲気によって向き不向きはあって、だれでも参加できる場はじつはだれにとっても居心地はあまりよくありません。
口コミをベースにすることで自然と雰囲気に合う人が集まり、居心地のよさにつながると感じています。
居場所づくりの今後の"発展":規模の拡大よりも実験の深さを目指す
さて、3年目のこれからはどうしましょうか。
ひとつの発展として、規模の拡大があります。
回数を増やす、人数を増やすことを目指す方向ですね。
この方向に思いを馳せた瞬間、強烈な違和感がありました。
自分たちはおうちプロジェクトを趣味でやっています。
商売では規模の拡大は大事なことですが、趣味では決してそうではありません。
ですから、この方向は早々に却下になりました。
ではどうするか。
自分たちはおうちプロジェクトを「居場所づくりの実験」としてやってます。
だったら、実験をより深めていく方向をめざしたいのです。
例えば、食事会の前に居場所や人生を学ぶ勉強会や読書会をやってみる。
ご飯を食べながら好きな遊びをやってみる。
そうした、1人ではできないことをおうちプロジェクトで好きに持ちこんでやれるようになる、というのもめざしたい1つです。
自分は「その場に主体的に関わるほど人はそこを居場所に感じる」という仮設を立てています。
集まった人が主体的に好きなことをやれることが大事で、どうすればそれを促進できるか。
自分たちが身を持ってモデルになって好きなことをやってみれば。行動を促す触媒になれるんじゃないか。
そうした実験を深めることが、今後のおうちプロジェクトが発展する方向だと感じます。
おわりに
キングコングの西野さんがゼロから町づくりをしています。
西野さんはその町を「待ち合わせ場所」と表現していました。
そこに行けば自分と価値観が合う人がいて、楽しい時間が過ごせる。余計な責任や役割はついてこない。
「待ち合わせ場所」という言葉も自分たちが目指す方向かもしれない、と感じました。
おうちプロジェクトの活動はしばらく飽きそうにありません。
たぶん実験が好きなんだと思います。
こういうものは続けることに意義があるので、もうしばらくやってみます。