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パーソナリティ(人格)障害への対応は「安定した人間関係をつくろうとは思わないこと」

行政職員向けの研修で、パーソナリティ(人格)障害についてレクチャーしたのでご紹介。

この前書いたアルコール依存症の話と一緒に説明した。

wa9ta.hatenablog.jp

 

対象は生活保護を担当する人たちなのも前の話とおなじ。

基本は事務職。専門用語は極力使わずにがんばった。

 

昔は人格障害と呼ばれていたけど、いまはパーソナリティ障害の方が一般的。

「人格が障害されている」という名前は、いかにもどぎつい。

いやまあ、英語にしただけなんだけど。

 

 

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パーソナリティ障害は幼児期では正常な言動が成人期に出現する

パーソナリティ障害は名前自体はよく知られてるけど、説明がなかなか難しい。

無理やりかんたんに言うと「幼児期では当たり前に見られていた言動が、おとなになってあらわれる」状態。

 

たとえば、幼児が自分の思い通りにならないとグズって暴れるのは当たり前。

パーソナリティ障害だと、これが大人になって出てくる。

 

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自分が悩む代わりに周囲を悩ませ、社会との軋轢を起こす

もうすこしわかりやすく言うと「自分が悩む代わりに周囲を悩ませる」のが特徴。

おとなになると自分が望むことがすべて叶わないことを理解して、気持ちに折り合いをつけることができる。

パーソナリティ障害の人はそれが苦手。自分の望みをそのまま周囲にさらけ出して、周囲の人間を操作して要求を通そうとする。

 

自分の気持ちに折り合いをつけるのは成熟したおとなにしかできない。

パーソナリティ障害の人は葛藤を抱えるには内面があまりに未成熟。

自分自身で葛藤を抱えることがしんどくて、まわりの人間に押し付けてしまう。

 

 

障害の性質上、まわりの人間を巻き込んでさまざまな問題が起きる。

暴力、アルコールや薬の過剰摂取、リストカット、自殺を企てたりと社会的な問題を起こすこともある。

役所では、要求が通るまで窓口でえんえんと訴え続けたり、他の課や市長あてに電話や手紙を送りまくることもあるようだ。

 

…ここまで書いて読み返したら、まったく手に負えないどうしようもない感じになってしまった。

でもじっさい、まわりとおなじくらい本人自身も苦しんでる。

これまでの経歴を振り返ると、虐待まがいな育ち方をしてきた人もすくなくない。

 

「パーソナリティ障害は治療の対象ではない」なんて言われることもあるが、現場の人は日々つきあうことになる。

ここから先は対応のしかたをみていきたい。

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対応の基本は「親密で安定した人間関係をつくろうとは思わないこと」

…いきなり身もふたもない感じになってしまったが、これにはちゃんとした意味がある。

 

ふつうの人間関係は、おたがいのことがよくわかってて安定した関係を結ぼうとする。

でも、パーソナリティ障害の人には「不安定なことが安定的に起きている」といってもいい。

安定した人間関係をつくろうとすると、居心地が悪くなって不安定にしたくなってしまう。

 

「自分のことをそんなかんたんにわかられてたまるか」とも思ってる。

安易に同情や理解を示すつもりでいると、大きな反発をまねくか、際限ない要求に巻き込まれていく。

 

常識的な関係の結びかたは徒労に終わる。常識に反したかかわり方が必要だ。

 

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振り回されずに一定した対応をこころがけ、生活の安定に焦点をあてる

では、どうすればいいか。

基本方針は、本人に振り回されずに一定した対応を心がけること。

 

本人と話すと、安定した不安定さを発揮してころころと話題や感情が変わる。

そこにいちいち反応しているとまわりの身が持たない。

たとえ本人と会話が成立していなくても、話したい内容を淡々と語り続けるといい。

意外にも本人は怒らず、その話題に合わせてくることが多い。

 

本人と話ていると、どうしてもパーソナリティ障害的な問題が中心になりがち。

アルコール依存のときにも書いたが、問題に焦点をあてるとさらに問題が悪化する。

 

生活が安定して営めているかに焦点をあてるほうがうまくいく。

パーソナリティ障害からくる問題は次から次に起きるので、解決してもきりがない。

いくら人間関係で問題が起きていても生活がなんとか成り立っていればよしとして、そこの安定を目指して会話を続けるといい。

 

投影的同一視という現象が起きることがある。

「自分が相手に抱いている感情が、逆に相手が自分に抱いていると感じる」こと。

本人がまわりに対して怒っているのに、逆に怒られていると感じて被害的になる、とか。

これに対してムキになって否定すると関係がこじれる。

こうした現象があることを知っておき、本人の感情に巻き込まれないことがだいじ。

 

言葉の端々をネジ曲がって解釈して攻撃することがある。

揚げ足を取られないようにいくら気をつけても、言ってもいないことを指摘してきたりもする。

ここもムキになって否定せず、さらりと流すほうがいい。

 

まとめると、本人の揺さぶりや巻き込みに反応せず、生活の安定のみを目指して淡々と事務的につきあっていくことがだいじ。

本人と共通の話題を結べるわずかな一点を探して、そこのみで薄い細い関係をつなげていく。

本人も濃密な関係をつくろうとして破綻し続けてきてるので、淡々とでも長続きする経験を積めると治療にも役立つ。

 

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担当は孤立するので、チームでの対応を

注意点をひとつ。

本人がまわりと問題を起こすと、担当者に批判の矛先が向く。

担当者が本人をうまく対処できないからまわりが迷惑をこうむる、となってしまう。

ときには他部署からクレームが入ることも。

 

担当者が無能でもサボってるわけでもなく、だれが担当してもこうした問題は起こる。

担当者が批判をあびて孤立することを、上司があらかじめ予想してフォローにはいることがだいじ。

ときには、本人にとって耳が痛いことを言う係と生活の安定を話し合う係で役割をわけるとうまくいくことがある。

 

 

まとめ。

パーソナリティ障害の人には、接点がわずかでも継続した安定した人間関係をつくることがもっとも治療の役に立つ。

濃密な関係をつくろうとするとおたがいしんどいので、どれだけラクに持続できる話題をつくれるかがポイント。

ひとりの担当者が対応すると孤立してつぶれるので、チームでのフォロー体制をつくろう。