人生相談所に勤めてるけど質問ある?

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アルコール依存症の人と接するときは「恥をかかせない」のがだいじ

市役所の職員向け研修の講師をした内容から、一部をご紹介。

 

対象は生活保護担当のケースワーカー

福祉関係の資格を持った人もいるけど、大半は事務職と大差ない。

生活保護受給者が増える市町村では、どこもこんな感じ。できるだけ専門用語を使わずにしゃべったつもり。

 

これから書く説明、ホントは職員だけでなく病気の人自身にも知ってもらいたい。

自分自身がどんな接し方をしてもらえると助かるのか知っておくと、周りの人にも説

できるし、職員に不適切な対応をされたときに異議申立てができる。

 

アルコールなどの依存症の人は、特に「わがまま」だの「ウソつき」だの言われやすい。

そういう扱いをすること自体が病状を悪化させてるのも気づかずに。

 

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人生の最優先がアルコールになる。家族でも、仕事でも、好きなことでもなく。

アルコール依存症とはどんな病気か。

ひとことで言うと「生活のすべてがアルコールに支配される」ということ。

言い方を変えると「人生の最優先事項がアルコールになる」ということだ。

 

ふつうの生活では、アルコールは人生の彩り、ちょっとした楽しみ程度のもの。

家族・友人・仕事・趣味などなど、たいてい他のことの方が優先順位が高い。

そうでないとまともな生活が成り立たない。

 

依存症になるとその優先順位が代わり、アルコールが一番になってしまう。

アルコールを飲むためにほかのことがおろそかになり、人間関係をかえりみなくなる

朝からお酒を飲みたいから仕事を休むようになり、酔っ払ったまま出勤したりもする。

 

アルコールのやっかいなところは、精神的・肉体的に依存するところ。

アルコールがカラダから抜けると禁断症状に苦しみ、苦しさから逃れるためにまたお酒を飲む。

もはや楽しむために飲むのではなくなってしまう。

 

 

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アルコールによるさまざまな精神症状

アルコール依存症になると、さまざまな精神症状が出現することがある。

 

幻視は小動物や虫、小人などの小さな生きものが見えることが多い。

昔テレビで子どものカラダに虫が這っている幻視が出て、タバコの火で子どもの皮膚を焼いた、なんてシーンがあった。

 

幻聴は会話形式で自分のことをバカにする内容が多いらしい。

妄想は嫉妬にまつわる内容が多いようだ。

 

アルコールからうつ症状も出る。

そうでなくとも、うつ病の人にアルコールはダメ、絶対。

 

統合失調症うつ病かと思いきや、根っこにアルコール依存症がある人もいる。要注意。

 

重篤な症状として、脳障害が出ることもある。

難しい内容だけど、けっこうヤバイので説明しとく。

 

ウェルニッケ脳症というもので、ウェルニッケさんが見つけたからこの名前がついた。

眼球が思うように動かせなくなって寄り目になったり、急に歩行が不安定になってふらふらするようになる。

意識障害も出て、最悪の場合に死に至る。ヤバイ。

 

命が助かっても後遺症が残ることがある。

コルサコフ症候群といって、コルサコフさんが見つけたからこの名前がついた。

過去の記憶があやふやになって、現在の記憶もおぼつかなくなる。

思考や会話には問題がないので、ちょっと話しただけではわからないことも。

過去と現在の記憶がダメになるので、つじつまを合わせようと日常的にウソをつくようになる。

これがアルコール依存の人がウソつきと言われるひとつの原因。

 

それにしても、覚えづらい病名はだいたい見つけた人の名前がついてるなぁ。

 

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対応の基本は「患者に恥をかかせない」こと

アルコール依存症の治療は、基本的に断酒。お酒をやめつづけるしかない。

でもこれがとっても大変で、再飲酒の確率は80%にもなる。

 

だからといって再飲酒したことを責めると、恥の意識から逃れるために再びお酒を飲んでしまう。

さらに、お酒を飲んだことをかくすようにもなってしまう。連絡がとれなくなってしまうことも。

 

逆に「一ヶ月お酒をのまずにいられてエラい」なんてほめようものなら、「自分はお酒をやめる程度でほめられるのか」と落ち込んでそれが飲酒のきっかけになる。

 

…じゃあどうしろと言うんだよって?

言いたいことはよくわかる。

 

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支援の原則は「七転び八起き」

よく「二度とお酒を飲まない」なんて念書を書かせたりするけど、そんな背水の陣的な覚悟は本人がお酒を飲んだ後毎回思ってる。実際まわりに言ったりもする。

そんなことに意味はないし、恥の意識を強めるだけ。

 

まず心がけたいことは、お酒を飲む飲まないでまわりがいちいちさわがないこと。

どうせ8割再飲酒するんだから、七転び八起きな気分でいたほうが本人もまわりもラク。

 

このいっしょにいてラクかどうかってのが決定的にだいじ。

接していてイヤになるとおたがい縁が遠くなる。依存症の人は孤立してるほど回復がむずかしい。

無理してお酒を飲まないようにガンバるより、お酒のことは重く扱わずにラクな関係で長続きするほうがはるかにいい。

そっちのほうがずっと治療の助けになる。

 

お酒を飲もうが飲むまいが、生活が成り立ってればよしとする。

お酒を飲んでも『また飲んだの?』なんて言う必要はない。罪の意識は言わなくても本人が充分すぎるほど感じてる。

逆にお酒を飲まずにいられても、報告を聞くだけ聞いてサラッと流すくらいがいい。

 

飲酒の有無にかかわらず同じ調子で一貫した態度を取り続けた方が、お酒は人生の重要なテーマじゃないことを態度でしめせる。

アルコール依存症の中心はお酒を飲むことじゃなく、人生の優先順位が変わることなんだから。

 

ちょっと余談。

アルコール依存症の人にかぎらず、最近よく感じることがある。

それは、「一筋縄ではいかない問題に焦点をあてると、さらに問題がこじれる」ってこと。

 

人は他人の問題をみるとすぐに解決したがるけど、本人が自分で解決できないことを他人が簡単にできるわけがない。

人はだれでも健康で安心してくらしたいと思ってるわけで、つねに問題を自力で解決する方向で進もうとしてる。

それが進まないのはその人に問題を解決する気がないんじゃなくて、解決に向かって進むことをジャマするナニカがあるってこと。

 

そのナニカってのは、衣食住の不安定だったり、人間関係の不安定だったり、人が安心して生きていく基本的なこと。

だから、本人の問題を解決したかったら、衣食住を安定させて、その人自身が本人と安定した人間関係を築くのがいちばんいい。

 

 

なにがいちばんいいって、そう考えるほうがおたがいラクなところ。

そのうち本人が元気になって勝手に自分の問題を解決しだすから、それを近くで感じていればいい。

アルコール依存症の人でも他の人でも、いっしょにいてラクなことがいちばんだいじなのだから。