子どもの貧困、特に関係性の貧困を助長する「2つの断絶」
子どもの貧困は経済的な貧困だけでなく、関係性の貧困が重要だと言われている。
基本的には、子どもを気にかける大人が多ければ多いほど、子どもにとってはいい。
子どもを気にかける大人が多ければ、経済的な貧困を脱却できる手立てが得られる可能性が高まり、関係性の貧困にもおちいらずにすむ。
社会制度的に子どもを気にかける仕組みを見てみると、断絶しがちな部分が2つある。
これを子どもの貧困を助長する「2つの断絶」と名付けて、それぞれ考えてみる。
1.未就学から小学校入学
保育園から学童保育に切り替わる「小1の壁」
この間に起こる困難さとしてよく言われる「小1の壁」。
就学前は保育園に通っていた子どもが、小学校入学にともなって学童保育に入ることで起こる問題がこう呼ばれている。
主に、共働き家庭において、子どもを保育園から小学校に上げる際、直面する社会的な問題を、『小1の壁』といいます。
保育園では、延長保育があるところも多く、ある程度遅い時間まで子どもを預かってもらえます。
しかし、公的な学童保育では通常18時で終わってしまうところも多く、保育園よりも預かり時間が短くなってしまい、子どもは、家で一人で過ごすことになります。
小学校に入学して急にしっかりするわけではないので、保護者は安全面でも精神面でも心配がつきません。
また、小学生になると、時短勤務制がなくなる企業も多く、子どもの小学校入学を機に働き方の変更を迫られるワーキングマザーの方が多くいるのが現状です。
これ、ひとり親だとなおさら大変。
子どもが夜家に1人で過ごしたり、親が早く帰れる非正規の仕事にならざるを得なかったり。
就学前まで充実していた子育て支援の終了
子どもが小学校に入る前までは、生まれた子どもを全員把握するレベルで手厚く支援する仕組みがある。
就学前の子どもが行ける場所といえば、保育園や幼稚園。
市町村によっては、ほかにも子どもと親が一緒に行ける場所を用意しているところもあるようだ。そこで子どもの成長具合を把握したり、親の相談にも乗っている。
地域担当の保健師もいて、定期健診や家庭訪問で家庭状況を確認して親にアドバイスとかしてる。虐待リスクの把握や子どもの順調な発達を確認する意味もある。
そんな支援環境が、小学校入学を期にがらりと変わる。
子どもと家庭の支援は基本学校が一手に引き受ける。虐待のリスクなど、深刻なケースは児童相談所とかが関わるが、リスクが少ないほとんどのケースは学校任せ。
学校の先生は教育のプロではあるけど、全生徒の家庭状況を把握して親と子どものケアをするほどのスキルも余裕もない。
それでも小学校はまだよくて、中学校になるとさらに難しくなる。
大多数の生徒と教師にとって、目標が「高校受験」になるからだ。加えて教師には部活の顧問もある。
教師の持ち時間で家庭のケアまで回す余裕は、ますますない。
2.中学校卒業、高校中退・卒業後
中学や高校を辞めた後、子どもの所属がなくなってしまう
中学校までは義務教育なので、子どもはかならずどこかの学校に所属している。
中学校卒業後は98%が高校進学しているので、ほとんどの子どもはその後3年くらいは高校に所属している。
所属があれば中の人が子どもを気にかけてくれる可能性はあって、そこから生活が立て直っていくこともある。
しかし、学校を辞めたらその可能性もゼロだ。
所属がなくなるということは、子どもを気にかけてくれる家族以外の大人がいなくなるということ。
家族が自分の子どもを気にかけない、かける余裕がなければ、その子どもを気にかける大人は本当にゼロになる。
若い人の暮らしを支援するしくみが貧弱すぎる
いまの日本には、若い人を支える仕組みが本当に貧弱。
どんなところがあるか、思いつくままに列挙してみる。
- メンタルの病気や障害のある人:障害福祉の各種制度
- 15歳〜39歳までの就労支援:地域若者サポートステーション
- 18歳未満の子ども:児童家庭支援センター
- お金や収入のない人:生活困窮者自立支援法の自立相談支援事業
書いてみたらいろいろあったけど、現場の感触からするとどれも発展途上。まだまだこれから。
なにより、若い人が自力でこうしたところにつながるのが難しい。相談できるところがあることをまず知らないし、知っても相談に行くのは相当の勇気がいる。
それに、自分の悩みを相談するってのは、そんなにかんたんじゃない。
まとめ
ここまでで、子どもの貧困を助長する「2つの断絶」を考えてきた。
- 未就学から小学校入学の断絶
- 中学校卒業後、高校中退・退学後の断絶
制度改正など待っていられないので、自分も現場でこれから取り組んでみる。
ある大先輩にこの件を相談したら「解決まで10年かかる」と言われた。
ならば焦ってもしかたないので、じっくり腰をすえてやってみようと思う。